読了no.7-世界から猫が消えたなら(川村元気)-

愛と喪失のおとぎ話、といった感覚になる一冊です。余命宣告をうけた僕は、突如現れた自分と同じ姿をした悪魔から「世界から何かを1つ消すことで、1日分の命をのばしてあげましょう」という取引を提案されます。

今日もし突然、

チョコレートが消えたなら

電話が消えたなら

映画が消えたなら

時計が消えたなら

猫が消えたら

そして

僕が消えたなら

世界はどう変化し、人は何を得て、何を失うのか 。

僕と猫と陽気な悪魔の摩訶不思議な7日間のはじまり。



著者は1979年生まれの映画プロデューサーで、『電車男』『告白』『悪人』『モテキ』『おおかみこどもの雨と雪』などを製作された川村元気さん。あるとき仕事先で携帯電話をなくしてしまい、仕事相手や会社とも連絡が取れなくなってしまったが、とりあえず次の打ち合わせ場所に向かうために電車に乗ったそうです。落ち込みつつもふと外を見るとものすごくきれいな虹がでています。「うわぁ、きれいな虹だなぁ!」とパッと車内を見回したら、全員が携帯に目を落としていて誰も気付かない。その瞬間、「自分は携帯を持っていることによって、世の中にあるきらきらしたものを見過ごしていたのかもしれない・・・」と思ったことをきっかけに誕生した作品のようです。感じるままに書きなぐった言葉が、ストレートに突き刺さり、涙が止まりませんでした。


最近のテクノロジーやインターネットの発展は、凄まじいものがあります。確かに情報取得の敷居が下がり、情報格差が取り払われつつあります。これにより「情報をいち早く取り入れなくては世の中に置いていかれる」という不安を生み出してしまいました。

「あれ、スマホを持つ前ってどんな気持ちだったっけ。こんな不安あったっけ。」

不安さえも愛しくなる作品だと思いました。


ー愛という、人間独特の面倒で邪魔で、でも絶対的に人間を支えているそれは、時間とよく似ている。時間、色、温度、孤独、そして愛。人間の世界にしか存在しないものたち。人間を規制しながらも、人間を自由にするそのものたち。そのものたちこそが僕らを人間たらしめている。

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